INTERVIEW 2018.04.24 #culturestyle

メールインタビュー 第1回:ミラーボーラー

記念すべき、第一回のメールインタビューは光と反射の空間作品を創りだすアート集団「ミラーボーラー」だ。個々のセンスと集団力はさることながら、彼らが生み出す作品を知れば知るほど、彼らのことをもっと知りたくなった。彼らが描く設計図は誰もまだ見ぬ世界の遥か向こう側。その行き先とは?

 

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過去のインタビューを拝見する中で、「脳天に劇的なメッセージを受信し、それがきっかけとなりミラーボーラーを立ち上げた」とありました。天から授かったインスピレーション。まさに「天啓」「啓示」ですが、差し支えなければそのあたりも含め、立ち上げに至った経緯をお教えてください。

 

ミラーボーラー家元 打越俊明氏
 具体的な「天啓」「啓示」などのメッセージを受信したのでは無く、内容は覚えてないですが多分夢を見たんだと思います。2000年2月29日朝目覚めた時、生きている事の素晴らしさ、地球の美しさに感動して涙を流してました。あまりに突然の出来事でした。その時何かに繋がった感覚と言うのか、突き動かされる衝動にかられ、自ら発信して創らなくてはいられなくなりました。

 

 コンピューターやCGでは計算しきれない自分の想像と視界を遥かに越えたものが創りたくて、数日も経たないうちにミラーボールと巡り合い、第1作目の構想が出来ました。100個以上のミラーボールに埋め尽くされた空間なのですが、それを実現するにはグラフィックデザインしかやった事のない自分にはとてもハードルが高く、完成まで導いてくれた諸先輩方や仲間と妻のサポートのおかげで最初の作品が産まれました。それがその数年後に数々の喜びと発見、試練と苦難を乗り越えて発足するミラーボーラーズの“はじまり”です。

 

夢ですか、凄い。しかも、うるう年ですね。そして、感動の涙まで。多くのサポーターに恵まれて誕生したのがミラーボーラーなんですね。別のインタビューで「原寸大のものを原寸大のものとして」表現したいとのことから、ミラーボーラーを立ち上げられたとも拝見しました。平面から原寸大にアート作品をおこす時、現実にあるものはなんでも使えるのに、なぜ「ミラーボール」という特定の素材を選んだのでしょうか?

 

打越 ミラーボールには手作業で貼られた数百個の1〜2cm角の鏡がついています。いくつものミラーボール同士の反射する光のパターンは計り知れません。その光線を可視化する事が最初の目的でした。

 

 どこまでも飛んで行くひかりはその作品のサイズを表しています。作り上げたものをCDジャケットのように小さく凝縮するのではなく、実際に想像して作り上げたサイズそのままで体感してもらう事がしたくて、光が拡散できる物としてミラーボールを選びました。

 

 身の回りにあって、誰でも出来るのに手を付けてなくて、定着したイメージから抜けられないモノと言うのが魅力的でした。実際に作ってみて気づいた事ですが、光には言語も説明も必要とせず、その人の心に直接語りかける事ができると思います。数百個の鏡のついたミラーボールには数百通りの角度の世界が写しだされ、何かが動くとその数百通りすべてに関係します。逆に言えば数百枚ある鏡の一片の中には全ての世界が集約されます。放たれる光以外にミラーボールにはそう言った面白さもあります。

 

 

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富士樹海『ECHO』2003:打越俊明 撮影:野村浩司

 

 

まさに光の世界は無限ですね。ところで、ミラーボーラーの作品はまるで建築のような規模ですが、構想期間はどのくらいなのでしょうか? また、実際の組み上げはどのくらいの日数で行われるのでしょうか?

 

中村 構想期間は案件に寄って異なりますが、短いもので1ヵ月、長いもので半年前位から考えるものもあります。それを経て数週間くらいでメンバー皆で部材の仕込みをします。

 

船木 短いもので一ヶ月、新しく設計からですと僕の場合、三ヶ月前から動き出します。

 

吉田 作品の組み上げは、おおよそで照明のセッティングを合わせて、3〜5日間ほどでしょうか。これも案件の規模、スケジュールによって異なります。

 

 

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なるほど。ミラーボーラーには、デザイナー・写真家・美術家・照明係など、様々なメンバーが在籍しているとお聞きしています。現在は何人のメンバーが在籍しているのでしょうか? また、それぞれが各分野で活躍されている中で、打ち合わせや作品制作はどのように行われているのでしょうか?

 

ミラーボーラーズ(株)代表取締役社長 麻田亮氏
 東京を中心に静岡、奈良、山梨など各地に総勢30名くらいはいます。それぞれミラーボーラーの仕事以外に本業を持っている人がほとんどで、プロジェクトごとに各自参加できるタイミングで参加するというフレキシブルな感じです。

 

|30名も。プロジェクトごとの参加というのはいいですね。素朴な質問ですが、過去に創った作品のデザインはデータとして残ると思いますが、実際に使われたミラーボールなどの現物はどうされているのでしょうか? また、過去に一度創った作品を別の場所でもう一度展示することなどはあるのでしょうか?

 

 

吉田 使用したミラーボールやオブジェの部材は、照明器具などと共に倉庫に保管してあります。案件によっては、マイナーチェンジを施しながらも数年越しで同じ作品を展示する場合もあります。
(例:宮沢賢治童話村、うめだ阪急本店など)



 

           
           
           
           
           
           

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『どんぐりと山猫』宮沢賢治童話村 2017:打越俊明 撮影:高木博史 装植:ねのうわさ

 

 

 

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『GIFT』うめだ阪急 2017:中村則夫 撮影:Peta Matsumoto

 

 

 

 

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|なるほど。
実際に依頼があった場合、まず何から作品創りが始まりますか?(作品創りの種のような、インスピレーションやきっかけなど)

 

アートディレクター&オブジェデザイナー 中村則夫氏 
 まず、現場に出向いて、その空間の「氣」を肌で感じる事を大切にしています。それにより受けたインスピレーションや場所のスケッチをノートに書き留めていきます。あとは、日々気づいた事やりたい事をスケッチしているのですが、そんなのも照らし合わせて採用したりもしてます。

 

船木 旅や音楽からインスピレーションを受けることが多いです。
何にどうやって自分や他人が心動かされているか考えたり感じるようにしています。

 

そのスタートから「作品」として創り上げるために、どんなアプローチをしていくのでしょうか?

 

中村 その場所の風土を調べたり、依頼者の意図を汲み取ったうえで自分なりの表現で形にして行きます。最終的に「勢い」や「自分的にグっとくるやり込み具合」を追求していると思います。あとは、自分が描いた作品のストーリーにどっぷり浸かって創るのが最高に楽しいです。

 

 

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勢いも大事なんですね。そうして進めていく中で、最初のスタートでイメージしていたものと全く違うものになったりすることもありますか? それとも基本的には最初のイメージに沿って膨らませたものになりますか?

 

アートディレクター&オブジェデザイナー 船木傑氏 
 最初のイメージからかけ離れることはありませんが、一人ではなく複数で作っているので最初のイメージから膨らむことは多いです。なるべく人の意見を聞くようにしています。もちろん意見がぶつかることもありますがそこが面白かったりします。

 

意見がぶつかってもお互いが認め合っているからこそですね。では、作品を創る上で大事にしていることは何でしょうか? また、良いものにするためにあえて制限していることなどはありますか?

 

中村 個人的にはどの作品にも天と繋がるような宇宙的な観点でストーリーを作ることを好んで考えます。最近では最初に浮かんだインスピレーションを大事に育んで行く事が近道なのではないかと思ったりしています。色々考えても最終的に最初に戻って来てしまうことが多々あるので。制限していることは特にありませんが、最終的に生命力溢れる作品を信条に創作しています。

 

船木 表現が説明的になり過ぎないことです。見て単純に「綺麗!」と思うことをまず大切にしています。素晴らしい音楽を聞いたとき反射的に「カッコいい!」と思う感覚と同じにとらえています。

 

 

         
         
         
         
         
         

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『千姫の宝石』彩時記×姫路城 2017:船木傑 撮影:高木博史

 

 

 

何もかもが壮大ですね。これは個人的な感想ですが、ミラーボーラーの作品を拝見すると、作品から生み出される「光」が、その空間を日常の延長線上に続く異世界に創り上げ、何かを語りかけてくるような気がします。ミラーボーラーの作品にとって、光とはどんな立ち位置・どんな役割なのでしょうか?

 

打越 僕らの作品はその時の環境や見る人の心情で見え方が変わると思います。僕は『作品』は生き物で、『ひかり』は呼吸、感情、もしくは言葉にならない言語で、見ている人を包み込み、語りかけ、調和して1つになる…ってなるといいなぁと思ってます。

 

 

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優しい気持ちに包まれそうな気がします。ミラーボーラーの作品が「空間」を創っていると考えると、屋外で作品を展示する時には自然を相手にするが故に想定を超えるようなことも起きると思います。気象条件はもちろん、季節の移り変わりによる変化など・・・。そういった場所で空間を創り上げることの難しさや面白さはなんでしょうか?

 

プロデユーサー 吉田真之市氏 
 元々は屋内で使用するべきミラーボールを屋外に持ち出すことによって、本来のロケーションからは想像もできないような幻想的な光の空間が生まれます。

 

 一方で、防風雨や積雪で作品が破壊されたりイベント自体が中止になってしまった!なんてこともあって、遥か昔から人類が行ってきた自然との共生という意味をつくづく実感させられます。しかしながら、良くも悪くも気象条件の僅かなタイミングによって生み出された奇跡の瞬間に立ち会う事が出来るのも、屋外のインスタレーションならではの事だと考えます。

 

 また本来であれば、その場にいないと体感できないそのミラクルを現実の感動とほとんどたがわずに画像または映像に記録出来ている事はとても大きいですね。これは本業がカメラマンのメンバーが撮ってくれているのですが、実際に作品創りに携わっている彼、彼女たちだからこそ収められる世界観なのだと思います。

 

 

ミラーボーラーとして作品を世に送り出す機会というのは様々あるかと思いますが、何かしらの会社やイベントから依頼があって、そのテーマや要望に沿って創ることが多いのではないかと考えています。しかし、2016年に参加された「Burning Man」は、それらとは異なり、特にそこで発表された「-Egg of Hope-」は、依頼があって創る作品とは一線を画しているように思えてなりません。紛れもなくミラーボーラーの意志というか、100%ミラーボーラーというか…ミラーボーラーとして作品に込めるものがより自由に、そしてより濃厚になるのではないかと。そういった作品でしかできないことはありますか?

 

打越 ご指摘通り自由な作品でしか出来ない事は勿論あると思いますが、幸いな事にご依頼頂いたお仕事でも割と自由に創らせていただいていると思います。自由な作品というのは他の作家さん達同様、直接的に作り手の感情やメッセージを伝えるもので、それには自分との対話というのがとても大きいのでないかと思います。まだまだあるやりたい事をベストなタイミングとご縁で世に出して行きたいですね。



 

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『Egg of Hope Burningman』2016:打越俊明 撮影:Peta Matsumoto

 

 

自由にできるというのは、ミラーボーラーの評価が高いという証ですね。それとはまた別に、ミラーボーラーの作品が完全な主役にはならないもの、例えば野外フェスや煌びやかなパーティ会場の装飾などは、どんな感覚や考えで創られていますか?

 

中村 空間にポスっと気持ちよくハマるものを創るのか、ガツンとインパクトで攻めて行くのか、それはその場所によりけりだと思うので、特に線引きはしていないです。いい感じのフェスティバルやパーティーって、もちろんアーティストは重要なファクターですが、照明とデコレーションが三位一体となって初めて成り立つものだと思っているので、イイ感じの空間を創って貢献できたらいいなと思っています。

 

船木 フェスでは正直ミュージシャンの煌びやかさに嫉妬する部分もありますが(笑)芸術って視覚や聴覚など総合的なものなので誰が主役かとは思いません。見る人(お客さん)は特に意識していないし考えても無駄だと思っています。

 

 

 

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『BAZARA Universe』COUNT DOWN JAPAN 2017-18:船木傑 撮影:Peta Matsumoto

 

 

「アート作品を創る」ということの根本の部分には、制作者が抱いている思いや考えがあると思っています。それは、自分の信念や、美しいと思うもの、現代社会に対する批判や同調、もしくはとにかく好きだからなど、色々あると思うのですが、ミラーボーラーにとってのそれは何でしょうか?

 

麻田 「アート作品を創る」という前提、意識ではあまりない気がします。最終的には光のインスタレーションという形でそれをアート作品と捉えていただくのは全然構わないのですが、創らせていただく環境、シチュエーション、そこに集まる人(お客さん)が合わさって、そこで感じる非日常の美しさや感動といった高揚感だったり、ゆっくりと回る光あふれる空間に包まれた時に感じる癒しだったり、ポジティブでラブなエネルギーがそこに生まれることが最高ですね。

 

船木 単純にミラーボールの光を見てみんなハッピーになってほしいです。CGやゲームでもないリアルな光を通して、未来や過去ではなく今を楽しんでほしいです。

 

|それでは、ずばりミラーボーラーにとっての「作品」とは何でしょうか?

 

打越 僕は前にも書きましたが、自分の感情を込めた『生き物』を作っていると思ってます。作っている最中から可愛がり、見ている人から「綺麗」と喜ばれたり好きになってもらえると、より輝きを増す『エネルギーの集合体』のようなものを作りたいと思ってます。

 

中村 見た人の心をも輝かせる太陽のようなパワーの源ですかね。自分自身も作品と向き合う中で磨かれていくし、自分が輝いていて初めて相手を輝かせられると思います。そして皆が輝けば世界はよりよい未来に繋がっていくのではないでしょうか。

 

船木 コミニケーションツール。ミラーボールの光の元ではみんな素直になれるはず。気持ちが少し大きくなるので、普段話せない年齢層と話したり楽しいです。

 

 

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『星降る樹』福徳の森 2017:中村則夫 撮影:Peta Matsumoto 装植:ねのうわさ

 

 

|エネルギーの集合体であったり、太陽のようなパワーの源にコミュニケーションツールですか。どれも私たちに力を与えてくれるものばかりですね。仮にテーマ・制作期間・お金・空間など、すべてのものに制約がなく、本当に自由に作品を創って良いと言われたら、やりたいものはありますか?

 

中村 月をどうにかしたいですね。NASA協力のもと、月面を埋め尽くす程ミラーボール等の反射物を敷き詰めたら、地球からはどう見えるのだろうかと妄想しています。

 

船木 秋田竿燈にミラーボールをつけて、ニューヨーク、パリ、エルサレム、マラケシュなどを練り歩きたいです。

 

|それは面白い。NASAにもこのインタビューを見てもらわないといけませんね。秋田竿燈の練り歩きも実現してほしいです。最後になりましたが、ミラーボーラーとしての今後のビジョン・向かう先をお聞かせください。

 

打越 沢山あるので、最終的な自分の目標だけ書きますね。僕は「ひかり」で世界平和に貢献したいと思ってます。紛争地域や貧困地区に『調和』が産まれる作品、揺るぎない平和、愛と喜びを心で通じ合い、分かち合えるもの。そんな作品が作りたいと思ってます。

 

中村 世界中の人たちに発信して行きたいです。「作品」という言葉を超えた共通言語でコミュニケーションができたら最幸ですものね。

 

船木 祭りに表現の場として強く惹かれます。極めて大衆的で老若男女が集まり、かつ五穀豊穣や神様に感謝の気持ちを伝えるスピリチャリティ。最高です。

 

麻田 まずは人として前を向いて成長していけること。それが作品として形になった時にも豊かに表現できるといいですね。ポジティブでラブなエネルギーがあふれる光の空間を多くの人と共有できたらと思いますが、日本に限らず国籍、人種、言語、宗教の垣根を越えて世界中の人にも体感してもらえるチャンスが増えていったら嬉しいです。

 

 

今回はお忙しい中、ありがとうございました。やがてミラーボーラーの「ひかり」が世界の隅々まで照らして、世界が優しく「ひかり」に包まれる日がくることを楽しみにしています。(カルチャースタイル編集部)

 

 

 

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『Light of Magic』赤坂アークヒルズ 2017:打越俊明 撮影:高木博史 装植:ねのうわさ

 

 

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